30秒でわかる、今日の実録
経営の判断は、社長ひとりに集まります。うちも同じでした。ただ今日はっきり見えたのは、経営が詰まる原因が「難しい一個の決断」ではなかった、という話です。
詰まっていたのは、決断の"重さ"ではなく"量"
私はいま、AI経営本部の上で、同時に3〜5本の仕事を走らせています。提案書の下書き、サイトの文言、資料のデザイン案、調べもの。それぞれが成果物を上げてくる。そのたびに私が内容を確認して、「これでいく」「ここを直す」を決める。これを一日じゅう繰り返します。
一個いっこの判断は、そんなに重くありません。重くないのに、詰まる。理由は単純で、量がさばけなくなるからです。AIのおかげで手はずいぶん速くなりました。ところが、確認して決める入り口は、私ひとりのまま。だから、速くなったぶんだけ、そこに渋滞が起きる。ボトルネックが自分だと、はっきり見えてきたのです。
面白いのは、AIを入れたことで、この詰まりが、かえってはっきり見えたことです。手が遅かったころは、そもそも仕事がそんなに上がってこないので、渋滞も起きませんでした。手が速くなって、成果物が次々に上がってくるようになって、はじめて「決める側が追いつかない」という、本当のボトルネックが姿を現した。速くして、はじめて、どこが詰まっているかが分かる。これは、AIを本気で使い始めた会社で、これから必ず起きることだと思います。
AIの取締役会に、そのまま議題を出した
そこでAI経営本部のAI取締役会に、議題をそのまま出しました。「決定が私ひとりに集中していて詰まる。どうするか」。
うちのAI取締役会は、役割の違う4体のAIで構成しています。全体を束ねる議長役、お金を見る役、外の視点で反対材料を出す役、そして監査役。人間の私は、最終決定だけを持ちます。
返ってきた答申はこうでした。「委任のルールを作りましょう。ただし、いきなり全部ではなく、影響が小さく後から取り返せる仕事を2件だけで試す。うまく回るか実データを見てから広げる」。反対役のAIは「一致率を上げるためにAIが社長に迎合し始めたら本末転倒だ」「欲張らず2件に絞れ」と釘を刺してきました。監査役のAIは、お金・契約・対外送信が今も人間の手元に固定されているかを一つひとつ確認していました。
正直、意外だった
見たときの正直な感想は、「意外だった」です。AIの取締役会が権限委譲を"すすめてくる"とは思っていませんでした。もっと言えば、委任したあと自分の毎日がどう変わるのか、まだ想像できていません。
考えてみれば、いま私がこうしてAIの組織を土台に仕事していること自体、少し前には想像していませんでした。以前に自分で開発していたAIは、簡単な補助ツールに経営理念や事業目標の文書を足したくらいのものでした。それがここまで動くようになるとは思っていなかった。だから今回の「委任をすすめてくる」も、驚きとして受け止めています。
それでも、譲らない線がある
任せる方向に進みます。ただ、絶対に自分が握る線は、はっきりしています。お金。契約。人との関係につながること。そして、自分の目標。この四つです。
答申のなかで、いちばん腹に落ちたのは「小さく試す」という一言でした。委任したい気持ちが強いほど、一気に手放したくなります。けれど、まずは後から取り返せる仕事を、二件だけ。うまく回るか、実際のデータを見てから広げる。この慎重さは、任せることに前のめりな自分への、いいブレーキになりました。任せるのは大事ですが、任せ方を誤ると、かえって取り返しに時間がかかります。だから、小さく、確かめながら進めます。
任せられるところは、どんどんAIに任せる。でも、人と人との約束や関係、いわば人への愛情や感謝、人と逢うことに関わる部分は、人にしかできない。ここはAIに渡しません。この線引きさえ動かさなければ、確認と決定の渋滞は、仕組みで薄められます。今日は、そう整理しました。
決断の量を、人の手だけでさばかない
もし、判断がすべて社長に集まって、日々詰まっているなら、疑うべきは、決断の難しさより、決断の量かもしれません。難しい一個より、軽い判断の積み重ねのほうが、社長の一日を埋めています。打つ手は、その総量を、人の手だけでさばこうとしないこと。任せられる決断を、人から仕組みへ移していきます。ただし、いちどに全部は手放さない。後から取り返せるものを、二件だけから。お金と契約と人と、自分の目標。この四つを握ったまま、それ以外を少しずつ手放していく。速くなった手に、決める側が追いつくための、一手です。
その後(2026年8月)。ここで書いた4体のAI取締役会は、8月に廃止しました。反対意見を当てる仕組みそのものは残しています。常設の会議はやめ、判断が要るときだけ使う道具に変えました。決めるのは代表ひとり、という点は変わりません。